2011年10月31日

久しぶりに東日本大震災の原発災害に関して(原発関連としては牛肉の稲藁汚染以来)。

最近見聞きする情報の中で気になったメディア報道のひとつに10月17日(月)の
NHK番組「あさイチ」で取上げられた<放射線大丈夫?日本列島・食卓まるごと調査>がある。
暫く時間をおいてもやはりこれはおかしいと思われたので取上げる気になった。

気になったポイントは「サンプリング調査方法」とそのデータから結果を導き出す方法の問題点。
数値を扱う分野の関係者には当たり前と思われるサンプリング調査方法とそのデータを基にした結果・評価に疑問が残る。
公正・公平をモットーにするNHK、そして出演していた専門家がその間違いに気付いているはずなのに放送されることに驚かされました(3・11以降も繰り返されているので改めて驚くことでもないのかもしれないが)。

番組のアウトラインは次のWebアドレスで・・・・。
http://www.nhk.or.jp/asaichi/2011/10/17/01.html
この中で次のようなキャッチコピーで放送された。

福島第一原発事故から7か月たった今でも消えないのが、食への不安。
子供を持つ母親を中心に、食への不信感が根強く残っています。
そこで「あさイチ」では、「日本列島食卓まるごと調査」と題し、大規模な全国
調査に乗り出しました。全国各地のご家庭にご協力いただき、一週間のあいだ食卓  に上った食材を、まるごと放射線の検査にかけ細かく分析してみました。すると明  らかになった、常識を覆す驚きの数値とは・・・?

番組が言いたかったことは「驚きの数値」という言い廻しにより暗に「安全」だったというNHKの恣意が読取れた。
その判断は置くとしてここでの指摘はあくまでサンプリング調査のあり方とその結果と
評価である。

★問題点★
・実施されたサンプリング箇所数
全国で7箇所(福島県から郡山と須賀川の2家族、札幌から1家族、東京からは江  戸川区・目黒区の2家族、大阪からは岸和田の1家族、広島からは廿日市の1家   族)を選んだことや1週間のデータを追跡したのは良いとしよう。
・サンプリング箇所数に対する考え方
例えば福島県からは郡山と須賀川の2家族のみのデータで「福島県の家族の食事の
安全性について語り、そのポイント数から結果を言及することの“意味合い”を注  釈しないで放送をすることは問題である」と私は思う。
何故なら、仮に「安全」とは言わないとしても1県の安全に関わる情報として視聴  者はここにNHKの判断として読取ることになるからである。

公正・公平をモットーにするのであるなら、上記キャッチコピー「明らかになった、常識を覆す驚きの数値とは・・・?」や放送の中で「福島県のサンプルはあくまで2事例の結果でありその他の家庭でも同じとは限らないこと、この数値から一般化した判断は出来ない」という主旨の注意を喚起した上で放送して欲しいものだ。
が、そのようなコメントはなかった。
まして、番組の中で大学の先生を出して「私が先にやりたかった」などと言わせるところは番組の公正性を見せるための作為も感じられる。

また、30日の地方紙に村上陽一郎氏は放射線許容量について言及した「時を語る」の
中で次のように書いています(ご参考まで)。

・・・確率は、多くの事象を取上げたときに初めて、意味を持つものであり、個別
事象に関しては、心理的な効果以外には期待できない。・・・

NHKの取上げ方・纏め方は村上氏の言う「心理的効果」を狙っているように感じられる。
因みに番組を一緒に見た連れ合いに家庭の一主婦の立場ではどう感じたかと聞いてみたところ、「単に、ニ、三の例として受け留めれば良いのでは・・・」という答が帰ってきました。
NHKは時には良いリポートなども放送しているのに、ことこの原発災害の報道に関してはメディアとしてのガバナンスが出来ていないように感じられた。

この番組にはその後の<オチ>があった。
11月24日の番組で「10月17日の番組で放射性物質の数値に誤りがありました」という謝罪があった。
これは分析装置のデータの判断にミスがあったということで、当方が上記で指摘した
こととは別の事柄についての謝罪だった。