2014年5月20日

19日、20日と地方紙に「福島原発による子供の甲状腺がん調査」について記事掲載が有った。

当コラムでも情報における分析手法について次のように取上げた。
・2011年10月31日のNHK報道への反応「食品の放射線汚染のサンプリング手法」
・2013年2月13日の「山形市中心市街地の歩行調査(昨年10月)」の分析手法について

何れの場合も情報過多の昨今、提供される情報で示されるデータの扱いとその評価を正確に「読み取る眼」の大切さについて取上げた。

今回は甲状腺がん調査の3種類のデータとその評価につい触れてみたい。

記事の中で数値データは要約すると次のようになる。
①福島の子供の調査結果:50人の甲状腺がん患者/37万人(≒0.014%)
②環境省が福島県外の子供の検査結果:1人/4400人(≒0.023%)
③国立がん研究センターのデータ(10代):1~9人/100万人(≒Av.で0.0005%)

記事によれば環境省は【 ①の福島県の子供の値と②の県外の子供の値が近いため福島での放射線の影響を否定している 】。

次の観点から表向きの数値だけでその評価を見誤ってはならないと考えるべき好事例と思う。
・①と②のデータの母数(検査対象)に84倍異なる
・②は福島県外としか分からないが概ね100人/県程度のサンプル数になる。また、どのようにサンプルを選んだか分からない。
・これを同じレベルで比較することははなはだおかしいと素人目でも思う。
・更に③の数値(日本全体のデータ)と比較した場合は約50倍という大きな値である。

ここで言いたいことは次の二つ。
一つ目は、上記数値の読み方(観点)にもかかわらず「福島原発事故の影響を否定する」ところに国の恣意を感じてしまう。
二つ目は、事実、事象の単なる記載しかしない最近のメディアの記事の取り上げ方、つまり厚生省の発表(上記【 】)にメディアの意見を触れないところに最近のメディアの役目の衰退を感じる。