戦争の記憶を不意に手放して父は令和の夏を生き抜く
作品:写真短歌
投稿者:佐藤紀之
写真撮影地:山形市
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父が令和二年五月二日、享年九十三歳にて生涯をとじ、葬儀は五月六日、近親者のみにて執り行いました。
父は、昭和二十年特攻隊に準じる駆逐艦の乗務員として終戦を迎え、南洋列島の復員兵の輸送に従事し、その後三十四年に渡り警察官の任務を全うしました。退職後は、運転免許センター講師、保護司を務める傍ら、俳句や写真に自分の世界を求め、俳句では数々の賞を戴き、米寿記念に句集「最上川」を上梓しました。孫を殊のほか溺愛し、数多くの写真やビデオで家族の成長を残してくれました。曲がったことが嫌いで、寡黙ながらも家族思いの父でした。
そんな父も歳と共に体の衰えは禁じ得ず、自分の命を最後まで掴むように頑張ってくれましたが、家族に見守られ、安らかに眠りにつきました。キリッと口元を引き締め、愛国心に溢れた海軍少年兵の面影を残し、俳句でふるさと山形を、そして自らの人生を叙情豊かに謳い上げ満足げな表情でした。
投稿日2020年8月22日
投稿者kuronuma