地方紙に「海外派遣自衛官の自殺54人」の見出しで記事掲載があった。
27日の衆院特別委員会で防衛省がアフガン戦争とイラク戦争に関連してインド洋やイラクに派遣された自衛官のうち54人が自殺していたことを明らかにし、これら自殺者の要因に派遣任務と自殺の因果関係を特定することは困難とした。
他紙等の情報を加味すると自衛隊の海外派遣が自殺者の増加を招いているというような論点から国会で取上げられているようだ。
これまでも、何回か指摘したがその数字の持つ意味を考える場合に他のデータとの比較をすることになるが、夫々のデータが持つ属性を踏まえずに表面的数字の比較(多い、少ないと)するのが多い。
今回のテーマは派遣自衛官の自殺数が他と比較してどうなのかであるのでこの記事及び全国紙の記事等も含めて以下に整理する。
まず概観のデータ:
①2013年の全国の自殺者数:27,283人、人口10万人当たりの国内成人での
自殺者数:25.4人/10万人(国家公務員では21.5人)
②2003~2014年の全自衛官の自殺者数:1,044人⇒現在の自衛官数が約2
2.5万人なので年単位、10万人当たりに換算すると
1,044÷12÷225,000×100,000≒38.7人
となり国内成人(国家公務員)のそれの約1.5(1.8)倍となる。
次いで個別データ:
2001~2010年の間の派遣自衛官の自殺者数:54人、この数値が多いか少ないかはこの間に派遣された自衛官数を踏まえて論ずる必要があるがその数値は記載が無いので推算してみると次のようになる。
③イラク派遣(2003~2009年)の自殺者数:29人⇒総派遣者数が9,300
人なので年単位、10万人当たりに換算すると
29÷7÷9,300×100,000≒44.5人
④インド洋派遣(2001~2007年)の自殺者数:25人⇒総派遣者数が13,80
0人なので年単位、10万人当たりに換算すると
25÷7÷13,800×100,000≒25.9人
何れも自衛官の平均値(38.7)の1.2倍、0.7倍という数値となり特段に海外派遣に従事した場合の自衛官が高いとは言い難い。
むしろ、自衛官全体と国内成人(国家公務員)の自殺者数の比較、即ち、約1.5(1.8)倍で論じるべきではないだろうか?
何故自衛官に一般人や国家公務員と比較して自殺者が多い理由として、「上下関係が厳しい隊内の環境が数字に表れているのではないか」と分析し、「安保法制が成立すればより海外任務が増えることが予測される。政府はその前に隊員の安全措置をきちんと明示すべきだ」という専門家の指摘もある。